俊物語 俊子ファンタズム 中
「ひゃっはっ、童貞人間タケイダーさまのご到着だぜ!タケイダーさまが機嫌を損なわないうちにタケイダー様に座れる場所確保してやろうぜ!」
タケオの友人達は遅刻してきたタケオを見るなり童貞人間タケイダーなどと、特撮ヒーロー物の頂点に君臨していそうな古参キャラクター名をもじった名前をタケオに命名し、崇めているのか見下しているのかどちらか理解しかねるが名前の最後にはきちんと‘‘さま”と付け、タケオを指差しケラケラ笑いながら盛り上がっていた。
確かに遅刻してきたタケオに座れる場所を提供してもらえるのはうれしい限りではあったが、どうも童貞人間タケイダーという名前に自分の存在が当てはめられたことには不服に思うほか無かった、しかし常識からかけ離れたネーミングセンスに響きのよさ、いったい誰に期待され誰と戦うのだろうかと設定にまで疑問を感じさせ考察をしたくなるほどまでにしてしまう魅力にタケオの脳は支配されていたのだ。
それもあって、いつの間にか童貞人間タケイダーは、なかなかいい名前を付けてくれたとそれに怒り6割感謝4割の感情をタケオにもたらせていた。
「おい、タケオなに突っ立ってんだ。目障りだから早く席に座ってくれよ、講師が俺達の方見てるだろ。」
「ああ、ごめんごめんちょっと前立腺が刺激されてさ、なかなか席に座れなかったんだよ。で、授業どこまで進んじゃってるの?」
下ネタ交じりの冗談を言いつつ席に着き、遅刻をしたので授業の進行状況を聞こうとするタケオ。
「出ましたタケオさまの下ネタ!平然と下ネタを絡めてくるタケオさまの腐った頭に痺れるぅ憧れるぅ!だから童貞なんだよお前。で、授業は世界の貿易摩擦改善案の2章ちょっと進んだところまでだな。」
タケオも頭が腐っているとか言われると普通に腹を立ててしまう方だが、大学生活始まって以来からの友人達で一緒になって遊んでいてもタケオは楽しいと思える、それに罵倒しつつも質問にもきちんと答えてくれているこの発言も今までの関係があって言えるもので冗談ということもタケオは理解しているし、この友人達に対してはよっぽどのことが起こらない限り腹を立て怒ることもないだろう。実際タケオも友人達に対しても罵倒じみた発言をすることは珍しくなく、その発言で笑いがそこで起こればそれでいいのだとも思っている。
「あーそんなところまで進んじゃってるのかよ、やべーノートもとれてないからこれは非常事態じゃん。わりぃけどさ今日の授業分のノート見せてくれねぇ?」
「はぁ?お前それが人様に物を乞う時の態度かよ。そのちっぽけなミジンコ以下の頭で、いや微生物で例えるのですらおこがましい。とりあえず言葉選べそして俺に跪いて懇願しろ。」
これはしくじった確かに遅刻してきてこの言い方は自分に非があるし、世間知らずにもほどがあると思うタケオは自分の発言に反省。だが跪いて懇願することに対しては疑問を感じ、なんでこいつに跪かなきゃいかないんだよと思いつつも非常事態にある今を凌ぐべくノートを見せてもらうために態度改め友人に頼み申した。
「遅刻をしノートすらとることができなかった可弱き青少年ナカスタケオ君にあなた様のノートをお見せください私はあなたに光を見ました。だがプライドは譲らん、もう一度言うプライドは譲らん。」
決意はしていた。こいつには跪きはしないと。ここで屈してしまうと、タケオの大事な何かが手から滑り落ち地面に叩きつけられ砕け飛び散ったグラスの様に無残に崩れて消えていくと思えたからだ。だがノートは見たい。写したい。そんな気持ちが入り乱れ、人に物を乞いているのか乞いていないのかよくわからない台詞を言わせてしまったのだった。
「わかった、わかった、お前の気持ちはわかったよ。ノートに対する気持ちがよ。じゃあ授業終わったらそれ貸してやるよ。明日また返してくれよな。」
「有難き幸せ。このご恩忘れることはありませぬ。」
タケオの想いが届いたのかタケオの友人は半笑いしつつもタケオにノートを貸すことを約束した。はれてノートを入手できることが確定したタケオはほっと息を吐き安堵の表情に満ちた顔を友人達の瞳に映らせた。
「おい、そこ何しゃべってるの?別に授業聞く気ないなら出て行ってもらっても結構だよ。」
タケオ達の会話が講師の耳に入いっていた様で、講師とってタケオ達は目障りな対象としてしか映っていなかったのであろう、他の生徒達にも迷惑が掛かるので流石に会話を止めることにした。
授業は終わり、教室にいた生徒達は散っていくその中タケオ達はまだ教室に残り会話をしていた。友人達は朝から授業を受けていたのか疲れが見えるがタケオはこの授業から出ていたので疲れなどまったくなかった。もちろん今終わった授業でタケオが今日履修している授業はすべて終了である。
「あー終わった終わった、授業終了っと。疲れたー。」
タケオは朝からまじめに授業に出ていた友人達の前で生意気にも挑発じみた発言を口滑ってしまったのだが、疲れていた友人達は反論することも面倒だったのかタケオの発言に対しては触れることはなくスルーという選択をしたようだった。
「さてと、俺今日バイトないし久しぶりにどこか遊びに行かない?」
友人の一人が期待に満ち溢れた瞳でタケオ達に対し遊びの誘いを切り出し、賛同者が現れることを待ちに待っていた。
「おー、いくいくボーリングしたいわー。みんなで一発キメようぜ。」
友人達は次々とその案に賛成していく、タケオ達の友人グループはタケオ含め5人なのだがタケオを除き他4人はボーリング案に賛成し、まだ答えを出していない者はタケオ一人となった。
「タケオ、お前はどうするんだ?行くってわかってるけどさ。」
「あーごめん、今日は用事あるんだ、すまないけど今日は行けないわ、また今度行くし。」
「おいおいタケオが用事とか、どうしたんだお前女でもできたのかよ」
いつもは遊びとならば張り切って一人テンションを上げているタケオだけに、友人達も断りの発言に驚きを隠せていないようである。しかし今回は申し訳ないが友人の誘いをパス。
タケオは朝見た夢を忘れようとして、授業中は夢のことを考えないようにしていたのだが授業が終わる合図のチャイムがスイッチになったのか急にあの夢がまたタケオの思考を占領するようになっていてた。
友人が遊びの誘いを切り出す前からタケオは既にもしかすると同じ夢を見た人がいるかもしれない、何か理由があってこんなにも変な夢を見てしまったのかもしれない何か調べて見れはその情報はおのずと出てくると思い何か解決策を模索し始めていたのだが策を思いつくのに時間を要する必要は無かった。
タケオは今やりたいことを最優先して行動する考え方だ。タケオが今一番やりたいことは朝見た変にリアルだった夢に対する自分が納得できる答えを出すことで、その答はインターネット検索で導き出すという根拠など全く無い非現実的な方法であった。
「理由考えておいて、じゃあもう帰るわ。」
「うんわかったー」
会話が成り立っていなかったがそれはさておきタケオは友人達にボーリングに行けない理由を決めるように頼み、それを了承する友人達。一人の友人がこの理不尽な会話に落ちを付けるべく突っ込みを入れる。
「おいおい、うんわかったーって意味わかんねーよ。」
本当にノリのいい奴らだ本当にこんな友人達がいてよかったと思いつつもタケオは走り出していた高まる思いはおさえられるはずも無く、早く答えを出したいそんなちっぽけで意味不明な理由だけでタケオにちゃんとした理由を聞こうとしている友人を振りほどきインターネット環境の整っているあのアパートに向かっていた。
つづく